令和8年(2026年)2月7日
一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達 昌人
寒暖の差の極端な日々ですが、季節は早春、皆様には元気にお過ごしのことと思います。
さて、健康でいつまでも頑張って生きることは、誰もが望むところです。
皆様も、運動からヨガ、サプリメントまで、何らかの形で健康促進を図っていられることでしょう。
ただし、本当の健康とは、フィジカル(身体的)ばかりでなく、メンタル(精神的)にあっても、活発であることが大切です。
ところで、佐藤愛子という作家をご存じですか? 現在、102歳の高齢で、10年前の2016年に出版された「九十歳。何がめでたい」が、売上げ100万冊を超えるミリオンセラーになって話題を呼びました。
これが草笛光子主演で映画化され、2024年6月に公開されています。
私は、友人がテレビ(WOWOW)で録画したDVDを貰って観ましたが、なかなか痛快で楽しい映画でした。あらすじは、90歳を過ぎて断筆宣言をし、欝々とした日々を過ごす彼女のもとに、中年の冴えない編集者(唐沢寿明)がエッセイの執筆依頼を持ち込んでくる。
その結果、生きづらい世の中への怒りを、歯に衣着せぬ物言いで綴ったエッセイ集が大反響を呼び、再び90歳にして活力を取り戻し、人生が大きく変わると言ったストーリーです。
佐藤愛子という大阪市生まれの作家は、小説家の佐藤紅緑の娘で、詩人のサトウハチローは異母兄にあたります。
女流作家としてデビューし、順調な執筆生活を送りますが、夫と一緒に起こした新事業が、一時は軌道に乗ったものの、旦那の常識外れな金銭感覚が原因で倒産。
偽装離婚して、彼女が借金をすべて肩代わりし、小説・随筆を書きまくり、テレビのワイドショーにまで出演する八面六臂の大奮闘で、借金をすべて返済したとの下馬評でした。
その経過を元にした小説「戦いすんで日が暮れて」で、1969年に直木賞を受けています。
また、当時の彼女は「憤怒の作家」と言われ、社会と男性を痛烈に批判するエッセイから「男性評論家」とも称されていました。
実はこの佐藤愛子に、かつて私がインタビューしたことがあります。
筆記具メーカー「Pilot」が、文具店向けに送る「ハウスオーガン(PR誌)」の紙面で、今から56年前の1970年発行。
その巻頭の特集記事(4ページ)が「入りよい店、入りにくい店」で、出席者は作家の佐藤愛子氏。そして、インタビューアーが私なのです。
経営指導・広告デザインの事務所などを経て、独立したばかりのヒヨッコの自分が、電通の一つのプロダクションから依頼を受けて、インタビューアーを任されたいきさつは、今は覚えていません。
片や主賓の愛子氏は、まさに文壇の寵児の女性作家。当時47歳。
当日のインタビュー記事を読み返してみると、店構え、陳列演出、品揃え、好ましい雰囲気や個性ある店作りなどを設問としていますが、話題の中心は、接客と販売員教育となって行くようです。
若い販売員に対する容赦ない悪口雑言など、愛子氏の面目躍如たる話しぶりで、編集の方も、まとめられるのにさぞ苦労されたことでしょう。
ただこの日は、大柄で美貌の愛子氏は少し疲れ気味の様子で、多分、原稿の催促に追われ、この会場から一刻も早く立ち去って、執筆作業に戻りたいという焦燥が感じられました。
しかし、佐藤愛子氏は辛辣さと同時に、歯切れのよい独特のユーモラスな文体で、田舎の母親などは大ファン。早速、このPR誌を送りました。
その後は、すっかり忘れていましたが、百歳を越えられたことをニュースで知り、調べてみると、この数十年間に、数多くの本(主にエッセイ集)を出版し、「菊池寛賞」など多くの賞を受賞されています。Amazonで見ると、その後、「九十八歳。戦いやまず日は暮れず」など相変わらず勇ましいタイトルの本が並んでいます。
昨年3月に発刊された「百一歳。終着駅のその先へ」(中央公論新社)を、図書館で借りて読みました。百歳を越えれば、さすがに舌鋒はいささか温和になったのではないか、という読後感でした。しかし、赤色を活かした装幀が、元気をアピールしているようです。
瀧靖之氏(東北大学加齢医学研究所教授)と言う人のベストセラーの著書「生涯健康脳」によれば、精神とは脳の働き、つまり「脳力」を鍛錬に関連していて、脳に常に刺激を与えることで神経細胞同士をつなぐ情報伝達回路のネットワークを強化し、新たなネットワークを広げすることが可能である、ということです。
さらに、記憶をつかさどる「海馬」では、年齢にかかわらず神経細胞が新たに作られる「神経新生」が起きることで、脳はいくつになっても、成長するとのことです。
脳を若く保つ生活習慣として、「運動、食事、睡眠、会話・コミュニケーション、主観的幸福感、趣味・好奇心」の6つを挙げていますが、けだし当然のことでしょう。
愛子氏の例を見ると、身体も健康なのでしょうが、やはり精神面の活力でしょう。生涯、執筆を続ける日常にあるようです。
身体の健康を保ちながら、周囲とのつながりを大切にし、真摯に仕事(あるいは趣味)に取り組んで行く、これが当然の健康の秘訣と言えるようです。
