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宇宙へ行った「サバ缶」のこと

令和8年(2026年)6月21日

一般社団法人日本POPサミット協会

会長 安達 昌人

「サバ缶、宇宙へ行く」は、フジテレビで放映中の番組ですが、もうすぐ最終回を迎えます。

 奇想天外なタイトルに興味を持って観ていた人もいるでしょう。重い題材でありながら、ややコミカルな青春ドラマで、ストーリーも登場人物も単純です。しかし、毎回、付き合っています。

・「サバ缶、宇宙へ行く」のTVキャラクター

 というのは、かつて自分が、ドラマの舞台となっている若狭小浜市に中学校教員として赴任し、6年間暮らした経験があるからです。

 そして、担任をした生徒の何人かが、「小浜水産高等学校(通称・浜水〈はますい〉)」で学んでいます。そのうちの一人が卒業後、上京して大手の食品問屋で活躍し高い役職につきました。今も親しき間柄です。


 ただし、小浜水産高校は若狭高等学校との統合により、2015年3月末で閉校し、119年の歴史に幕を閉じたのは、ドラマの通りです。しかし、地域住民の熱望によって、学校は「若狭高校海洋科学科」という名称で引き継がれています。

 

 さて、「サバ缶、宇宙へ行く」は実話なのか? 本当に宇宙へ行けるのか? と気を揉ませましたが、このドラマは、水産高校の生徒たちが実際に挑んだプロジェクトをモデルにしています。それも、途絶えることなく生徒たちが引き継いで、約14年の長い年月と、延べ300人以上の生徒たちが関わったと言われます。

 北村匠海演じる熱心な先生にも、モデルがあるようです。

もともと水産高校では、授業でサバ缶を作っていて、地元の特産品として好評でしたが、「自分たちの作るサバ缶を宇宙に届ける」という目標を立てます。きっかけは高校生らしい思い付きですが、ただアイデアに終わらず、本気の研究プロジェクトとして取り組みます。

 とはいえ、宇宙食として認められるには、厳しいルールをクリアしなければなりません。

 その一つが、ドラマで紹介される茨城県つくば市にある「JAXA(ジャクサ・宇宙航空研究開発機構)」の「HACCP(ハサップ)=食品の安全を管理する仕組み」です。学校の実習室という環境でこれに取り組むことは難関です。

 今一つの課題は「無重力」への適応です。普通の缶詰だと、汁が飛び散る心配があるので、 ドラマでは地域特産のクズでとろみを付ける工夫をしています。また長期間滞在の宇宙飛行士に美味しいものを食べて欲しいと、味づくりの調整を繰り返しましています。

 まさに、今日の「モノづくり」の原点を見るようです。この努力が、卒業する生徒から新入生へとバトンが受け継がれていきます。

 さらに金銭的なバックアップや設備面でも地元の協力が必要で、ドラマでもその状況を描いています。

 こうした試行錯誤の挑戦の結果、2018年に「サバ醤油味付け缶詰」が宇宙日本食として認定されたのは快挙です。高校生が作った宇宙食として、世界で初めての出来事だそうです。

 そして、このドラマが訴えているのは、「自分たちの創り出した夢を諦めずに、トライし続ける大切さ」ということでしょう。

・魚店の店頭の「浜焼き鯖」

・「サバ缶」の陳列とPOP広告(「ジュピター」の店内で承諾を得てスナップ)

 小浜市は、古代から「御食国(みけつくに)」とされ、鯖街道によって地元の海で豊富に獲れたサバなど魚介が、京の都に運ばれました。

 ただし残念なことに、1970年代半ばからサバの漁獲量は激減し、今はほとんど獲れないといった状況です。小浜市の店頭で見られる浜焼き鯖や、名物となっている「へしこ」も、すべてノルウェー産の鯖。ドラマの魚市場では豊漁のサバを見せていますが、今や幻の魚で、サバ缶も同様です。地球環境の変化、海水温の上昇が原因です。

 「サバ缶、宇宙へ行く」は、若狭湾のサバはもう復活することは無いのだな、という悲しい現実への直面と、良き日へのノスタルジーに陥るドラマとも言えます。


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